聡明な無知~ヘンリー・フォード

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聡明な無知

 あなたは「聡明な無知」という言葉を知っていますか? これは、ジグ・ジグラーが「新人セールスパーソン」の強みとして挙げたものです。彼らはまだテクニックはありませんが、何ものにも染まっていない純粋な熱意を持っています。恐れを知らない「聡明な無知」。この熱意こそがベテランセールスパーソンにも劣らない結果を出させるのです。

 この聡明な無知について、ジグ・ジグラーは、自動車王として一時代を築いたヘンリー・フォードを取り上げて紹介しています。

 ヘンリー・フォードは十分な教育を受けたわけではありませんでしたが、自動車の将来性にいち早く目をつけ、大量生産に挑みました。そして、あのT型フォードとA型フォードで成功し、大変な財産を築き上げたのです。
 
 ある日彼は、8気筒のエンジンを作ろうと思い立ちました。ところが、フォードはエンジニアではありません。そこですぐに優秀なスタッフを呼び集め、自分のアイデアを形にするように指示を出しました。
 ところが、エンジニアたちにしてみれば、フォードのアイデアは奇抜で、とても実現などできない絵空事にしか考えられなかったのです。
 そこで彼らは、フォードの機嫌を損ねないように注意しながら、とても不可能だと説明しました。

 するとフォードはこう言ったのです。
 「困難だということは私にもわかっている。だからこそ、君たちに作ってもらいたいんだ。今すぐとりかかってくれたまえ」
 でも、エンジニアたちは、無理だとわかっていることに時間をかけようとはせず、形ばかりの研究でお茶を濁し、数ヵ月後、フォードにこんな報告をしたのです。

 「やはりご説明したとおりでした。とても不可能です」
 「君たちにはわかっていないらしい。私たちには8気筒エンジンが必要なのだ。さあ、すぐに取り掛かりなさい」
 エンジニアたちは、今度は前よりも少しだけ長い時間と、少しだけ余分な費用をかけて研究してから、フォードに報告しました。

 「やはり無理です」
 フォードはカンカンに怒って言いました。
 「これが最後のチャンスだ。そして、私が聞きたいと思っているような報告ができるようになるまで、戻ってこなくてもいい。いいかね、君たちが作ろうとしているのは、8気筒エンジンなんだ。なぜできないかを考える前に、どうやればできるかを考えたまえ」
 
 そして、エンジニアたちはやり遂げたのです。8気筒エンジンは、ひとりの男の「聡明な無知」の生み出した、奇想天外な思い付きが現実の形となって現れた結果なのです。

 何の仕事にも、「何ができないか?」を知らない人が必要です。
 そんな人たちこそが、世の中に出て成功することができる人なのです。

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